422日目
2003年6月15日(日)
【天気】晴れ時々くもり
【記録者】とっこり
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「海を歩く馬」
6月11日からずっと福岡市にいる。
行きたいところがたくさんあったからでもあり、雨が降ったりして動けなかったからでもある。
でもいちばんの理由は居心地のいい家に泊めてもらっていたからだろう。
今年の2月、沖縄県の宮古島で一人のおばちゃんと知り合った。
その人は福岡から旅行に来ていた。
もし福岡に来ることがあったら寄っていって。
そう言われたのを真に受けて本当に寄らせてもらったのだ。
今は夫婦と猫2匹で住んでいるその家庭は、暖かくてぬくもりがあって、旅人を受け入れるだけの心のゆとりがあった。
1泊のつもりがずるずると4泊になったのもそんな家庭の雰囲気のせいかもしれない。
でもさすがにこれ以上お世話になれない。
じっとしていられない二人のはずなのに、お尻から根っこが生えてきて動けなくなりそうだったからだ。
お別れを言って、何度もお礼を言って、また会える日を楽しみにして久しぶりに自転車に乗った。
日曜日とはいえ交通量は多い。
荷物を積んだツーリング自転車で大都市を抜けるのはいつも苦労する。
なるべく交通量の少ない道を選んで走るようにしているけど、どの道を選べばいいかなんてのは地図を見ただけではさっぱりわからない。
これまでの経験とカンを頼りに大都市をくねくねと通り抜ける。
博多港に出るまではひたすら細い道を選んで走っていたが、こんなことじゃ福岡市をいつになったら出られるのかわからないという不安を感じ、都市高速道路に沿って一気に抜けることにした。
都市高速道路を走るのではない。
高架になっている都市高速道路の下には一般道路が並行して走っていて、この道は歩道がずっと完備されているのだ。
交通量こそ多くて排気ガスをたくさん浴びることになってしまうけど、まっすぐ走っていれば大都市を抜けることができるからありがたい。
排気ガスと騒音の中、無機質な冷たい風景を眺めながら黙って走り続ける。
田舎道を走るよりも数倍体力を消耗していくのがよくわかる。
福岡市を抜けるまでのほんの10数キロ、たったこれだけの距離で一日の体力を使い果たしてしまったかのようにぐったりしてしまった。
休憩をはさみながら、とくに寄りたいところもなく自転車は進み、国道495号線をひたすらひたすら・・・。
昼過ぎには宗像大社の近くにやってきていた。
そして昼休み。
ここまで来てやっと、ほっと一息つけた気がする。
宗像大社にはどうしても寄っておきたかった。
ここは交通安全祈願の神社として有名らしいからだ。
宗像大社
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旅の安全を祈願する
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危険と隣り合わせの日本一周自転車の旅。
いつ事故にあってもおかしくない旅でここまでなんとか無事に続けてこられたのは多分、日頃の行いがよかったからに他ならない。
(と都合よく解釈する)
けれども旅はすでに400日を超え、気力・体力にも少しずつだが落ち込みが見られる。
マンネリだって出てきている。
最後まで気を引き締めるという意味で、改めて交通安全について考えておきたいのだ。
ちょっとした油断が命取りになる。
そんな旅だから初心に帰らなければならない。
神様にお願いするのではない、自分の気を引き締めるためなのだ。
あと何ヶ月かかるかわからない残りの旅路、五体満足で無事にゴールできるように自分に言い聞かせ、でもやっぱり他力本願で「神様お願い!」と祈ったりもした。
日本全国のいろんな神様に拝んできた・・・つくづく日本人だなぁと感じる。
ここから国道をしばらく避けて海岸沿いを走ることにする。
遠回りにはなるがさつきの松原を通りたかったからだ。
日本三大松原になっていないから特にスケールが大きいというわけではないが、松原を抜けていくまっすぐな道を走り抜けるのは気持ちがよい。
佐賀県唐津市の虹ノ松原のように国道が松原を走っているわけではないから、交通量が少ないものグッド。
午前中のぐったりを吹き飛ばすように気持ちよく走った。
途中、砂浜へ出られるところを見つけて自転車をおいて歩いて出てみることにした。
松原を抜けてみるとそこには一面の海、遠くには島がひとつ・・・ふたつ。
そして砂浜が広がっている、浅瀬では親子で遊ぶ姿が、馬が2頭じゃぶじゃぶと歩いて・・・
不思議な光景
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海を歩く馬
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えっ??馬??????
そこには確かに馬が2頭、波打ち際どころか海の中を悠々と歩いている。
海と馬。
人が乗っているから乗馬だろうか。
でもなんで海で乗馬するんだろう・・・。
いつもの見慣れた海岸風景に、陸の動物としてのイメージが強い馬がいるというギャップ。
不思議な光景にしばらく呆然としてしまった。
わからん、全くわからん。
さつき松原海岸を離れてもう少しだけ進む。
海に沿って景色の開けた道がしばらく続いていて順調に走っていると、たくさんの親子が磯遊びをしている場所を見つけて立ち止まった。
トイレも水もないところだけど景色は最高だ。
夜は波の音しか聞こえなさそうな場所で気に入ってしまい、まだ時間は早かったがここで本日の走行を終了。
福岡市を抜けるのに苦労して、宗像大社で交通安全を祈願して、さつき海岸では海を歩く馬を見た。
これだけいろんな出来事があったにもかかわらず一日を振り返ると
今日は走ってばっかりでたいした日じゃなかったなぁ〜
と思ってしまうのはどうなんだろう。
旅に対してぜいたくになってきているんだろうか。
走って走って一日を終えるよりもあちこち道草をしてほとんど前進しなかった方が充実感のある二人。 自分たちの旅のスタイルが確立しつつあるのは間違いない。
最近の手抜き料理
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静かな海岸
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アフターファイブを楽しむ
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