344日目
2003年3月29日(土)
【天気】晴れ
【記録者】とっこり
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「佐多岬」
自転車だけでなく日本縦断・日本一周する旅人にとって佐多岬という場所は聖地である。
道の駅根占での朝
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北海道の宗谷岬から遠く離れたこの地を目指してくる旅人は数え切れない。
北から南へ津軽海峡を除いて陸続きでたどり着くことができる最南端がここ佐多岬であり、この地を抜きにして旅を語ることはできないといってもいい。
そんな佐多岬、できれば宗谷岬からずーーーっと走って一本のわだちをつないでここまで来たかった。
しかし亀のように歩みの遅い我々の旅ではその願いは叶わず、名古屋から沖縄へ、そして沖縄から鹿児島へと石油燃料で飛び回ってしまった。
佐多岬はゴールではない。
ここからまた新たに、愛知県刈谷市に戻るという旅がスタートするのだ。
今日がそのスタートの日となる。
今日を境に進路を北へと向けるのだ。
天気は朝から晴れ。
すがすがしい朝の空気を吸いながら交通量の少ない道をすいすいと走る。
根占町から佐多町まで平らな道のりをなんなく走り抜け、佐多町役場で休憩することなく(今日は土曜日で休み)佐多岬に向けて走り続けた。
ここから先は険しい。
小さなアップダウンから峠のようなアップダウンまでいろとりどりでヒーヒーいいながら、それでも今日は午後からトレッキングがあるから体力を残さないといけないからくたばらないようにペース配分に気をつける。
途中、すれちがった車からお菓子の差し入れをもらいつつ大泊までやってきた。
大泊は佐多岬まで続く有料道路(ロードパーク)のスタート地点だ。
この有料道路は自転車や徒歩で旅行する旅人にとって鬼門ともいうべき存在である。
佐多岬にはこの道路を使わないといけないのにあろうことか自転車や徒歩は通行禁止なのだ。
たとえ禁止されていても宗谷岬からはるばるやってきた旅人はなんとかして佐多岬に行きたいから、ゲートが閉じられている営業時間外に柵を乗り越えて岬まで走り抜けるという強攻をしていたのだ。
なぜここは有料道路なんだ?と疑問を感じながら・・・。
朝早くにこそこそと柵を乗り越えていくことのむなしさを、日本を縦断するものにとって佐多岬がどれほど重要かということを、この有料道路を管理している人(自治体?)は知っているのだろうか。
そうやってグチをこぼしたところでどうなるわけでもなく、とりあえず料金所の右脇を通り抜ける道路へと入って大泊キャンプ場へ向かった。
今日はここで宿泊の予定だ。
広い砂浜と芝生。
好きなところにテントが張れる、はずだったのになぜかゴルフの打ちっ放しをしている人達が。
砂浜にも芝生スペースにもポンポンとボールが飛んでくるから危なくて近づくことすらできない。
キャンパーがいるときはやめてほしいよな〜と思いながらも少し高台に登ってテントを張り、昼食を食べながら休憩をとった。
午後は佐多岬へ。
といっても有料道路は使わない。
実はもうひとつ別のルートが存在するのだ。
それが「海岸ルート」だ。
田尻という集落から海岸沿いに歩いて佐多岬に向かうトレッキングコースは「シェルパ斉藤」氏が町長にお願いして公認化されたルート。
有料道路に苦しむ旅人のためにと作られたルートだ。
自転車と一緒に本土最南端に行くということはできないけど、お金を払ってたどり着ける最南端よりもさらに南に到達できるというのはすばらしい。
我々は今回「シェルパ斉藤」氏に敬意を表してこのルートをゆくことに決めた。
スタート地点
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キャンプ場のある大泊から自転車で数キロ、田尻に入った。
この集落のはしっこにトレッキングコースのスタート地点はある。
自転車を停めていよいよ歩きだ。
本当に最南端まで行けるのか不安を抱えたまま海岸に降り立った。
海岸沿いのルート
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目の前には海と砂浜があるだけだ。
道らしい道はなく目印すらない。
ただひたすら南を目指して砂浜を歩く。
あしもとにはサンゴがたくさん落ちている。
沖縄を出たらもうお目にかかれないと思っていたのにびっくりだ、しかも沖縄のどの浜よりもサンゴの数は多いかも知れない。
拾う人が少ないからだろうか。
砂浜が終わって岩場を歩いたり、また砂浜になったりしばらく歩いていると岩壁がそそり立つところへやってきた。
道がなくなった・・・。
海岸沿いを歩いていこうとするとこの岩壁を伝っていく必要がある。
できないことはないだろうけど多少危険を伴うようなルートになる。
きっと別の道があるはず、そう考えて山側にルートらしき痕跡がないか探してみる。
生い茂る草をかき分けてそこらを散策するとやはりあった、人が歩いたような跡が見つかった。
道はあってないようなもの
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これが目印
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そこをずんずん登っていくと木の枝に一本の目印となるロープがくくりつけてあった。
これがきっと「海岸ルート」である目印なのだろう。
まちがっていないようだ。
再び浜に出てしばらく歩いていくと、またもや山伝いに登っていくルートが現れた。
今度はしゃれにならんくらい危険。
斜面を横切るようにして進んでいくのがかなり難しくて、渡っている本人は70度くらいの角度の斜面を歩いている感覚。
そこを過ぎると草が生い茂って道がわからなくなった。
推定70度の斜面
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急斜面を下る
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目印となるロープが見つからない。
ここだ!と思って進んで行くがどんどん山へと入っていくようなルートが怪しくて引き返す。
そこら一帯をうろうろしてやっと下へ降りていくロープが見つかった。
ロープを使わないと降りられないようなルート。
とんでもないところに来ちゃったな〜〜。
こんなことを何度か繰り返すうちに疲れてきた。
もうそろそろ着いてくれないと帰りがきつくなるなぁ、と思い始めたそのとき、ついに佐多岬の灯台がかなた遠くに見えた。
あ〜〜〜もうすこしだ。
これで一気に元気が出た。
まだいくつか厳しいところもあったけどなんなく通過、山の上の方にある展望台を見ながらそこよりも南を目指して歩き続ける。
トレッキングマップ
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灯台は山に隠れて見えない。
展望台はもうすでに今いる位置よりも北にあるようだ。
もうすこし、もうすこし。
海岸沿いにぐるっと回って大きな岩場を越えたそのとき、
見えた!!
ここが本土最南端だ!!!
ずっと上の方にある展望台(ロードパークの終点)と最南端の目印である灯台との中間地点。
とうとうたどり着いた。
ここから新たに旅が始まるのだ。
本土最南端から旅のスタート地点である愛知県刈谷市を目指す新しい旅が。
ベクトルは北へ向かう。
最南端への到達と、新たなスタートを祝って、持ってきていた焼酎で乾杯した。
サイコーにうまい。
天気は快晴、海はおだやか。言うことなしだ。
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