328日目
2003年3月13日(木)
【天気】雨
【記録者】とっこり
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「縄文杉に会いに」
朝起きるとすでに雨。
昼前から雨でしょうという天気予報はあてにならなかったようだ。
明日は曇りという予報を信じて、今日一日はがまんしよう。
というのも2泊3日のトレッキングで縄文杉に会いに行く予定を立て、初日は白谷雲水峡をぐるぐると回るくらいの散策にして2日目に縄文杉までレッツゴーのつもりだから、今日よりも明日の天気が大事なのだ。
そうはいっても初日で服が濡れると後が続かない、雨対策はきっちりしておいた。
といっても「ありあわせ」に過ぎない。
カッパは上下ちゃんと汗を逃がすやつを持っているから安心。
デイパックは専用雨具がないからゴミ袋をかぶせる。
靴が濡れるのはどうにも防ぎようがなさそうなので、靴下の上からゴミ袋をはいてそれから靴を履く。
つまり靴は濡れるけど靴下&足は濡れないですむという作戦だ。
うまくいくのか?
完全装備!?
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町役場前を9時9分のバスに乗って白谷雲水峡へ向かう。
白谷雲水峡まで自転車で行く案も検討していたが、たこべーの猛反発にあってあえなく却下。
標高0mから縄文杉に会いに行った方が感動は大きいと思うんだが、それよりもまず感動どうこう言うまえにたどり着ける体力があるかということをたこべーは考えたようだ。
バスに乗っている間、もし自転車で来ていたらどうなっていたかを考えながら景色を眺めていた。
全体的にペダルをこげそうな勾配ではある。
たまにきついところがある程度だ。
雨の中を走るにはちょっと無理があるかもしれないけど・・・。
バスはぐいぐいと細い道をくねりながら標高を上げていく。
ずーーーっと下の方に宮ノ浦の街が見える。
らくちんなバスに乗っているとたしかに早く着くかもしれないが、排気ガスが環境を汚すという問題もあるしなによりも自転車で登りきったときのあの感動は味わえない。
あーーやっぱ自転車で来るんだったかな〜〜。
スタート地点
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白谷雲水峡もやっぱり雨。
雨だというのにけっこう人がいる。
環境保護・清掃協力金として300円を集めていたので受付で払う。
そのときに入山届けも出す。
すると
縄文杉の近くにある高塚小屋まで今日のうちに行っておくと明日には帰ってこれるよ。
というアドバイスが帰ってきた。
初日:白谷雲水峡→白谷山荘→(ここが長い登り)→縄文杉→高塚小屋
2日目:高塚小屋→縄文杉→(ここが長い下り)→白谷山荘→白谷雲水峡
というのが受付のおばちゃんプラン。
当初の予定では
初日:白谷雲水峡→白谷山荘
2日目:白谷山荘→(ここが長い登り)→縄文杉→(ここが長い下り)→白谷山荘
3日目:白谷山荘→白谷雲水峡
のつもりだった。これは宮ノ浦へのバスが早い時間になくなってしまうことを考慮してのプラン。
2日目にくもりという天気も考慮してのプランだったのだが・・・貧弱な装備での2泊3日には少々不安があったことも事実。
1泊2日で済んでしまうという新しい提案にその場で考え込んでしまった。
もし今日のうちに縄文杉まで行くとすると、一番きつい行程を雨の中で歩かないといけないのだが・・・やはり軽装備だから何泊もしたくないという思いが強い。
悩んだ末の結論、それはついさっき聞いたばかりのおばちゃんプラン。
なんとかなるじゃろ。
雨の中を出発。
さっそく苔むした風景が広がる。
最近では「もののけ姫」の舞台として有名なようだが、なるほどわかるような気がする。
降りしきる雨がこの雰囲気をいっそう盛り上げてくれるような感じだ。
はぁーーすごい・・・これが白谷雲水峡か・・。
屋久杉だけでなくいろんな植物が群生し共生し、ありとあらゆるところに苔が生えて緑のじゅうたんを創り出している。
もののけの森へようこそ
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コダマ出そう・・・
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思わずためいき
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ついつい立ち止まって見入ってしまう。
雨が降っていて思うようには写真が撮れないけど、そのぶん心にしっかりと焼き付けておこう。
あちこちに大きな杉の木。
太い幹と高くそびえるその風格は見るものを圧倒する。
なのに周りとうまく調和しているのは自然のなせる技だろうか。
だらだらと歩いているうちに白谷山荘に着いた。
中に入ってみると明かりがないからどんよりと暗い。
だだっぴろいから100人(一応定員は30人)でも寝られるだろう。
ただし今回はここではなく高塚小屋で泊まることにしたから、昼食をとったら出発した。
ここから辻峠までは30分ほど。
このあたりが最も苔むした雰囲気が強い。
まさに「もののけの森」と呼べる場所だ。
緑につつまれながら歩いていると、どんどん力が沸いてくるような気すらする。
峠までの登りは疲れを感じることなく逆に体力を蓄えながら歩くことができた。
辻峠付近
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峠からトロッコ道までの下りは思った以上に長くて苦戦。
この辺りもまだもののけな感じが残っている。
人があまり通らないルートなのか道は整備されているとは言えず、雨のせいでぬかるみがひどくて歩きづらい。
ところどころに水たまりができてしまっている。
すれ違う人がなくて不安になりながら歩き続けて、トロッコ道に出たときには思わずガッツポーズをしていた。
このトロッコ道は延々と1時間も続いた。
延々とトロッコ道
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ゆるくて平らだから歩きやすいけど、はっきりいってつまらない。
帰りもここを通るのかと思うと今から気が重い。
荒川登山口からのコースだとこのトロッコ道を2時間半〜3時間も歩くことになるようだ。
大変だね、こりゃ。
大正時代、国有林の森林伐採の為に敷かれたというトロッコ道。
これがあるから縄文杉の日帰りツアーも可能なんですよ。
森林伐採が自然破壊だ!なんてことはトレッキングしている立場上は決して言えません。
入山すること自体が自然破壊ですから。
トロッコ道ではたくさんの登山客にすれちがった。
ガイドさんをつけた団体も多い。
トロッコ道の終点付近でそのガイドさんのうちの一人からとんでもない話を聞いてしまう。
「高塚小屋、今日は人が入れないくらいいっぱい泊まるぞ」
さっき小屋の前を通ったけどえらいたくさん人がいたというのだ。
おいおい勘弁してくれよ〜そんなこと言われてもここまで来たら行くしかないだろ。
引き返せないって。
まだ午後3時前だからガイドさんが小屋で見た人達はこれからもう少し移動するに違いない、そうやって都合のいいふうに考えて歩き始めたがいつまでたっても不安は消えなかった。
トロッコ道を離れるとしばらくは厳しい道が続いたが、そのうち根の保護のためか木で階段を作った遊歩道が多くなってきた。
歩きやすいけどなんか興ざめ。
そのうち道の脇にちらほらと雪が残っているのが見えだし、ついにはあたり一面が雪で覆われてしまった。
今降っているのではない、積もっていたのがまだ残っているのだ。
3月中旬の屋久島といえども標高1200mくらいになると雪は残っているのか。
遊歩道も滑りやすくなっていて気をつけながら慎重に歩く。
ウィルソン株に到着。
外からウィルソン株
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中からウィルソン株
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でかい!!
株しか残っていないのが残念だけど、そこから上の部分を想像すると開いた口がふさがらない。
この株を最初に発見したのがウィルソン氏だとか、豊臣秀吉に献上するために切ってしまったのだとかいろんな話があるようだけど、目の前にでっかい木がある。
それだけでいいじゃないか。
雪が・・・
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ここを過ぎた辺りからたこべーのペースが落ちてきた。
聞くとおなかの調子がよくないらしい。
雨の中を歩いて汗かいて吐く息が白いほど寒くて、となれば体調も崩れるだろう。
今日は小屋で1泊するのに大丈夫だろうかと思いながら、それでも進まなければとゆっくりゆっくり歩く。
縄文杉まであと少しだというのにその道のりは果てしなく遠い。
疲れはピーク。
行けども行けども縄文杉は姿を見せず、もうアカンと思い始めたそのときついにやっと目の前に一本の木がそびえ立った。
圧倒的な存在感
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・・・・・・・・
言葉はなかった。
今まで見てきた屋久杉とはあまりにも違いすぎるそのスケールに言葉はいらない。
樹齢2600年だろうが7200年だろうがそんなことはどうでもよく、ただ縄文杉はそこにいるのだ。
それだけでいい。
この姿を見るために、ここまで雨の中をびしょぬれになりながらがんばってきた。
来た甲斐はあった。
ほんとうによかった。
高塚小屋まで数百m、なぜか元気になった軽い足どりですいすいとあっという間にたどり着いた。
ガイドさんが言っていたように小屋の中が満員だったらどうしよう・・・ドキドキしながら扉を開いてみる。
・・・5人。よかった、たくさん空いてる。
聞くと昼過ぎまではほんとにたくさん人がいたようなのだが出ていってしまったようなのだ。
まったく人騒がせなガイドさんだ。
まあとにかく今日は外で凍えるなんてことはなさそうだ。
が、小屋の中にいても息が白い。
ようやく到着
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寒さと湿気がすごい!
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銀マットすら持ってきていない、寝袋ひとつでこの寒さに耐えられるのだろうかと不安になりながらご飯を炊いて食べていたが、どうにもこうにも耐えられそうになくて小屋に常備されていた銀マットと封筒型シュラフを借りることにした。
マットを敷いて寝袋を2重にしていればなんとか耐えられるだろう。
・・・それにしても寒い。
高塚小屋の標高ではだいたい金沢市と同じ気温になるというから、場合によっては朝の気温0度というのもありえないとはいえない。
うう〜かんべんしてくれ。
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