325日目
2003年3月10日(月)
【天気】くもり時々晴れ
【記録者】とっこり
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「おじさんを焼いて食う!?」
夜中にぽつぽつと雨が降ったけどたいしたことはなく、朝にはすっかり晴れていた。
朝日がすばらしい。
怒られないようにテントを張った
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湯泊温泉
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湯泊温泉の駐車場はキャンプ禁止になっていたのでそこから数百m離れたところのちょっとした広場にテントを張っていて、朝はそこから温泉まで歩いていって温泉で顔を洗った。
そして朝食を食べてテントをたたんでいると1人のおじさんが話しかけてきた。
1月7日に毎年行われているサギチョウみたいな行事のこと、他の旅人の話、季節によって移り変わる山や海や花のことなど、聞いてもいないのに一方的に話しかけてきた。
そのなかで「あんたらが一晩無事に過ごせたのはあの天神様のおかげかもしれんぞ。」
といって岩場の上の方を指さした。
岩場を5,6mほど登ったそこには小さな鳥居とともに天神様がまつられていた。
いや〜これにはたまげた。
守ってもらったかどうかは別にしてもまさかこんなところにいるとは。
天神様はこの視線で見守ってくれた
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全然気づかなかった。
途中から話しに飽きてきてそろそろ出発しようかと思い、その岩場をよじ登って天神様にあいさつに行く。
手を合わせて祈る、ムム〜。
とそのときである。
下の方で一台の軽トラックが通りかかって止まった。
さっきのおじさんとなにやら話をしている。
もう一人、温泉の管理人のおじさんが犬の散歩でやってきて話をしていたが、軽トラックは魚を2匹渡して走り去っていった。
岩場から降りていって魚を囲んで4人で会議を開く。
早起きは三文の得?
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どうするこれ?
おまえら包丁あるか?活きのいいうちにさばいて食え!
ということで包丁とまな板をとりだして調理開始。
海水で魚を洗い、うろこを落とし、はらわたを取り除いて3枚におろす。
そして刺身の完成。
もう一匹のひげの生えた魚、こいつは刺身ではなく焼いて食べることにする。
ところでこの魚、なんて名前ですか?
返ってきた答え、それは
おじさん
だった。正式な名前ではないそうだがこのあたりではそう呼ばれているという。
なるほど2本のひげからおじさんを連想するのはたやすい。
とりあえず新鮮なうちに、おじさんでない方の刺身をいただく。
魚をさばいた板前2人
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おほっ、うめぇ〜!
ぷりぷり感がいかにも新鮮さを物語る。身の締まり具合は沖縄で食べた刺身のようなゆるーーい感じはするけど、なかなかいい味だ。
つづいておじさんを焼く。
その辺に落ちている流木を拾い集めて火をおこす。
火の勢いが弱まってきて炭になってきたところで木の棒に差したおじさんを火に近づける。
ジュージューと音がして身の色が透明から白に変わっていく。
魚の香ばしい匂いが煙に混じってあたり一面に漂う。
しばらくするとたき火はほとんど消えて、魚の焼き具合もよろしくなってきた。
かぶりつく。
たき火で魚を焼く
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ほっふぉっ、こりゃいい!
炭焼きによる遠赤外線がどうこうとかそんな小手先のうまさではない、理屈では説明できないうまさがここにはあった。
屋久島で、海を見ながら、採れたての魚を、ワイルドに、地元の人とふれあいながら食べられるなんて一体誰が予想できただろうか、いやできまい。
食べ終わって残った骨はアラとしてみそ汁のだしに使う。
波打ち際の岩場で亀の手という貝を採ってきてこれと一緒にみそ汁に入れることにした。
気づくともうすぐ昼、あんまりのんびりしすぎると今日またここで泊まることになってしまう。
地元のおじさんにお礼を言って出発した。
平内海中温泉へ。
潮の満ち引きによって海水が出入りする、波打ち際の温泉だ。
平内海中温泉
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まるで海に入っているような錯覚に陥る。
満潮時には完全に海に沈んでしまうらしく、今日のこの時間は入れないかな〜と思っていって見たがちょうどいい具合だ。
試しに足をつけてみるとちょうどいい温度。
昨日の夜に入った湯泊温泉とは違って暖まりそうだ。
源泉は44度。昨日の夜にここに来て温泉に浸かりたかった・・・。
平内を去ってさらに先へ進む。
夕方には尾之間という集落に入り、せっかくなんで温泉へ。
1人200円の公衆浴場はわりと新しいようできれい。湯船の底には玉砂利が敷きつめられていて、ほどよい熱さがこれまたいい。
硫黄泉の独特の香りが鼻についていかにも温泉に入っていますという雰囲気だ。
尾之間温泉
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湯船はたったひとつ、シャンプーやボディソープどころかシャワーさえもない質素な温泉施設だが、それがまたいいんだよね。
なんか屋久島ってすばらしいところだ、と今日で6日目の滞在なのに毎日そう感じている。
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