タイトル
HOME > 日本一周の記録編 > 実現 > 旅の日記(目次)> 2003年04月16日
362日目
2003年4月16日(水)
【天気】晴れ
【記録者】とっこり
「天草」

雨が降らないとわかっていても屋根のあるところにテントを張ってしまうのは朝露でテントが濡れてしまうのが嫌だからだ。
気持ちのいい朝にたくさん自転車を走らせたいという思惑から、少しでも早くテントをたたんで出発する必要があってそのためにはテントを乾かす時間を省くのがいいという結論に達している。

小さな橋の下で

だからテントを張るときは露が降りないように橋の下や軒下を選んでいるし、そのおかげで午前7時ころにはさわやかな風を浴びながら走っている。
今日もわざわざ橋の下にテントを張ることによって朝露を防いだ。
地元の人が怪しむようなテント設営だけど気にしない、気にしていたら旅なんてできない。


登校中の小中学生とすれ違うたびに
おはよーございまーーす!
という明るい声がかかる。
こちらからあいさつをしなくても、だ。
都会はもちろん地方でもあいさつが返ってこないちびっ子は多い。
田舎だからじゃねーの?というそんなおおざっぱな分類ではここでは説明できない。
この地域の親子のあり方なのか学校側の教育のたまものなのかは知らないけれど、あいさつと笑顔がいかに大事かということを旅を通して実感している今だからこそ小中学生の「おはよー」には感動した。
ここは河浦町、熊本県河浦町です。
もう一度いいます、河浦町です。

入り組んだ海岸線に沿って左手に海を見ながら平坦な道を気持ちよく走る。

どこにでもある港町に

天主堂が顔を出す

数百mのトンネルを抜けて左手に港町が見える。
小さなさびれた港町、どこにでもありそうな港町のはずなのに、にょきっと教会(天主堂)がひとつ建っているその光景がほかとは違う雰囲気を出している。
そう、ここはキリシタンの里「天草」なのだ。

神社や寺院がその集落や地域にとけ込んでいるのと同じように、この崎津天主堂はそこにあるのが当たり前のようにとけ込んでいる。

崎津天主堂

歴史を感じるなぁ・・・。
そう思いながら天主堂まで行ってみることにした。
集落を走っていてもいたって普通の町、でもこの町には今でもキリシタンがたくさんいるんだと思うと少し特別な町のように思えてくる。

天主堂はでかかった。
なんだかそこだけ日本じゃないような感じがする。
どうやら中に入れるようなので、遠慮がちに中へ。
朝日がステンドグラスから射し込んでいい感じ。
10数列ある長椅子のいちばん前に座って、祈りを捧げてアーメン
キリスト教徒じゃないけど一応アーメン。


日本人はキリスト教徒じゃないのになんでクリスマスを祝うんだろう?
そんなことを考えていた時期があった。
日本人の生活、ものの感じ方にはずっと昔から神道が根付いている。
神道は「いっけん宗教ではないようにみえるが、じつはよりよい人間社会をつくりあげるために必要な宗教」のことで「人間中心の宗教」である。
和を尊ぶ、和を乱さないように生きる、義理や人情を大切にする日本人の生き方は神道の考えが社会に浸透している結果なのである。
「聖書」や「コーラン」のような神の戒律がないから日本人は無宗教だなんていわれることもあるけど、和を大事にして自然を愛するところに宗教性があらわれている。 海や山、木や石や花、太陽や雨など自然の恵みに対して感謝し、そこに神の存在を見いだして信仰してきたのが神道の考え方であるからだ。
自然のあらゆるものに対して神を信仰し、さらには徳川家康や菅原道真などの実在の人物までも神として信仰してしまう日本人だからこそ、イエス・キリストも神の一人として取り入れることができたのだろう。
もちろん日本人のすべてがこんなことを考えてクリスマスを楽しんでいるとはとうてい思えないし、何も考えずに単純に楽しんでいる人の方が多いと思う。
それでいいんじゃないか、心の奥底に眠る日本人の無意識の信仰心ということで。
ちょっと堅い話になってしまったけど、イエス・キリストの前で祈るときにそんなことを考えてしまった。


崎津の集落を出て、岬を回るときに海を見守るマリア像を横目に眺めながら大江の集落を目指した。

岬のマリア像

大江天主堂

天主堂からの眺め

大江にも天主堂がある。
ここでも中に入ってお祈りする。
よけいな雑音のない空間で目を閉じているとなんだか心が落ち着いてくる。
不思議だ。
ここを出てからロザリオ館に入場して勉強。
天草とキリスト教との関わりについて、キリスト教の伝来、天草・島原の乱、キリシタン弾圧の歴史などをここでしっかりと学んでおく。
学校で教科書を開いて学んでいるときは「ふーん、そう」というくらいにしか思わず受験のための知識として頭に詰め込んだことが、今いるまさにこの地で歴史に触れると興味を持って知ることができる。
これまた不思議だ。


高浜の白鶴浜にて昼食。
海を見ながらごはんを炊いて食べていたら地元の人が昼休みでやってきてご一緒した。
この浜の近くに景色がバツグンの場所があると教えてくれて、せっかくだから行ってみることに。

十三仏公園から

エメラルドの海が

くねくねと坂を上っていって十三仏公園に着いて、そこから海を見下ろす。

こりゃすごい!
地元の人が勧めるだけあってすばらしい景観だ。
沖縄で見たエメラルドグリーンの海がここにも広がっている。
息をのむ。


天草サイコー!

ここから先のサンセットラインと呼ばれている国道389号線も気持ちのいい道で、宮崎県で出会った日南フェニックスロードにも負けないくらいのすばらしい道だ。
快晴がここまでの感動を与えてくれたのは間違いないが、天草という土地に加えて天候との出会いに恵まれた結果が感動を呼んだとすると、やっぱり出会いというのは大切にしないといかんね。


下田温泉につかってアカを落として建物から出てくると
と〜勇気だけ〜がと〜もだ〜ちさ〜〜
とアンパンマンのテーマがどこからともなく聞こえてきた。
???
だれが流してるのかと思ったらすぐ近くに停まっている白い1BOXカーだった。
後ろのドアを開けてパンを売っている。行商だ。
なるほどアンパンマンね。


温泉に入ったあとのだるさを引きずりながら苓北町の富岡までやってきた。
キャンプ地を求めて走って走って、ここにキャンプ場や海水浴場があるからなんとかなるだろうというもくろみだった。
ところが、キャンプ場に行ってみると1人600円ということで断念。
我々には高すぎる。
海水浴場はキャンプ禁止の立て札がある。
夏に花火やらなにやらで騒がれたことがあって禁止になったと地元の人は言っていたし、君たちが一晩くらいテント張っても怒られることはないって言ってくれたけど、その人はいいと思っても他の住人がどう考えているかわからないし看板が出ている以上キャンプすることがためらわれる。
とはいってももうすぐ日が沈む。
これから遠くに走っていくこともできず、海水浴場から少し離れたところにある遊歩道の休憩スペースに寝床を決めた。
ここなら大丈夫・・・か?


日記を書き終わって、今から夕飯を作りはじめれば暗くなる前に食事を終えられる・・・というときに一人のおじさんが話しかけてきた。
旅のことを話すとすごいすごいと誉めてくれて、こうやって会えたことを喜んでくれて、せっかくだから記念写真を撮ろうといって自宅までカメラを取りにいった。
数分後、カメラを携えてやってきた。
夕日をバックにパシャリ、夕日を避けるようにしてパシャリ、いろんなアングルで角度やポーズにこだわっている。
もうちょっとあご引いて〜
右足をペダルにかけようか〜
おふたりさん、もうすこし近づいて〜

ポーズをとっているとなんだかモデルになった気分。
でも早くご飯作らないと暗くなっちまうよーーーと内心イライラしながらポーズ。

このおじさん、方言丸出しでおもしろい。

夕日が沈む

それでばってん・・・ばってんここからな、
やたらとばってんを連発するのがおかしくて、二人で「ばってんおじさん」と命名。
写真撮影が終わったらそのばってんおじさん、今度はオレの撮った写真を見てくれといって自宅に戻って段ボールを抱えて帰ってきた。
段ボールの中には額縁に入った写真がぎっしり。
今立っているこの場所からの夕日の写真が多い。
この人はきっとこの土地が好きなんだろうな。それってすばらしいことだね。


おもしろい出会いだった。
このあと近くの公園を紹介してもらってそっちでテントを張って、暗闇の中でラーメンを作って食べた。
明るいうちに食事を作れなくてイライラしたりもしたけど、結果的には無事に夜を迎えられたし、またひとつ貴重な出会いがあったんだからよしとしよう。




移動
出発地 熊本県河浦町 コレジヨ庭園ふれあい橋の下
到着地 熊本県苓北町 山陽公園

今日の出費
1050円

走行データ
走行距離 47.3km
総走行距離 9989.0km
走行時間 3時間18分
平均速度 14.2km/h




前の日記へ | 目次へ | 次の日記へ








100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!