305日目
2003年2月18日(火)
【天気】晴れ時々くもり
【記録者】とっこり
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「秘境マヤグスクへ」
ついにやってきた。
ほしずな亭キャンプ場
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ここまで300泊あまりの旅を続けてきて初めての山中テント泊である。
自転車で旅をしていれば宿泊場所には必ず近くに道路があった。
登山はここまで2回したけど日帰りだった。
やったことがありそうでなかった山中泊を、今日ついに西表島のジャングルで実行するのだ。
ツーリングの装備は登山にも応用しやすいというのはよく聞く話。
多分大丈夫だろうと思っている。
が、心配なことは多い。
はっきり言ってテントは重い。自転車に積むなら問題なかろうと安物の3〜4人用テントにしているから、かさばるうえに4kg以上あって果てしなく重い。
そして登山用のザックを持っていないから小さなデイパックで行くしかない。
必要最低限の荷物で、食料は1泊分しか持たずにでかけるという無謀さ。寝袋は持てないからあきらめて、水の入った1.5Lペットボトルはそのまま手に持って歩くという暴挙。
大丈夫か?
朝、話しかけられた中年(30代?)のおにーさんと一緒に浦内の観覧船乗り場に向かった。
ここから観覧船でトレッキングコース入り口まで行くのだ。
ところでこのおにーさん、長野県松本市でライダーハウスを経営しているという。
自動車整備工場で働きながらの兼業らしく、きっかけは北海道だった。
10年間ほど毎年のように北海道をバイクツーリングしていて、旅人にとってありがたい無料キャンプ場やライダーハウスなどの安宿が心に染みたそうだ。
それで長野にもあったらいいな〜〜ないなら自分で作ってしまえ〜〜ということでライダーハウスを始めたという。
普段はバイクで旅するのが今回はゆっくり走れる自転車にしたと言っていたが、見ればわかる。
走り方がまるで素人だもん。
自転車ツーリングを長くやってる人の走りは見たらすぐにわかる。
観覧船乗り場に到着して乗船券を窓口で買い求めると、警察署と営林署に届けが必要だという。
西表島横断コースの場合は届けが必要だけどマヤグスクの滝をみて戻ってくるのならいらない。
数日前、エコツーリズム協会で確かにそのように聞いた。
なんていいかげんな!と思ったが届けが必要とあれば提出しないと出発できない。
まず警察署に電話して名前・住所・電話番号・トレッキング日程などを伝えた。
次に営林署に電話したが何度かけても留守電になってしまう。
乗船時間が迫っていてのんびり待っていることもできず、留守電にメッセージを入れて急いでボートに飛び乗った。
まったく、最初から届け出が必要だと知っていればこんなに焦らずに済んだのに。
エコツーリズム協会とか観光案内所とか意見を統一しておいてくれよーーー。
遊覧船に乗る直前、ほしずな亭キャンプ場にいた5人の大学生グループがやってきて乗船券を買っていた。
横断コースを2泊3日くらいで歩くと言っていたからきっと1時間後の次の遊覧船で来るだろう。
トレッキング途中でもしかしたら抜かれるかもしれないなと思っていると遊覧船は動き出した。
川幅の広い浦内川をぶおおおおーーーーんと走っていく。
マングローブ林が両岸を覆いつくす中を走り抜けていくと複雑な気分になる。
遊覧船が起こす波によってマングローブがやられてしまうという話を聞いたことがあるからだ。
そんなことがあって同じコースをカヌーで走ろうかと考えたりもしたけどトレッキングの前に体力を使い切ってしまいそうだったからやめた。
トレッキングコース入口
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環境保全を考えたらカヌーの方がいいのだろうけど、そもそもジャングルをトレッキングすること自体が環境破壊につながるんだからあまり気にしてもどうかと思う。
申し訳ないという気持ちだけは忘れないようにしよう。
30分もすればトレッキングコース入口である軍艦岩に到着。
ここからは歩きだ。
まずはマリユドゥの滝、次にカンピレーの滝、ここまでの往復が一般的なコースだ。
ここから先は西表島横断コースに入る。マヤグスクの滝は途中にある。
一緒に乗っていた他の観光客は帰りのボート時間があるからかさっさと早足で歩き始めたが、我々は泊まりで特に急ぐような日程を組んでいないからゆっくりと一番最後を歩いた。
トレッキング開始
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サキシマスオウノキ
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まさにジャングル
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午前10時スタート。
写真を思う存分撮りながらちんたらちんたらと歩く。
コースはきれいに整備されていてたくさん観光客が来ることもあって踏み固められていて歩きやすい。 40〜50分は歩いたと思うがたいした疲れもないままマリユドゥの滝展望台に到着した。
展望台からマリユドゥ
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すぐそばでマリユドゥ
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茂みの隙間からは遠くにマリユドゥの滝が見える。
はーーん、あれがそうか。
「マリユドゥ」というのはこれまた聞き慣れない言葉だが、「丸い淀み」という意味があるようだ。
そういわれれば丸く淀んでいるかな〜なんて風に見てしまう。
言葉って怖い。
展望台から10分ほどで滝に到着。
遠くから見るのとは違って迫力満点だ。
岩肌を川が流れていく感じは北海道のカムイワッカの滝みたいだなとか、丸い滝壺に向かって落ちていく滝の感じはナイアガラの滝みたいだなとか、ナイアガラの滝は見たことがないのにそんなことを考えていた。
でもそんなに感動が大きいわけでもないしまだまだ道のりは長いから先へ進むことに。
歩き始めて10分ほどで次の滝に着いた。
カンピレーの滝
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カンピレーの滝だ。
滝と言っていいかわからないくらいなだらかに流れ落ちているから迫力が足りないように思えたが、すぐ近くまで行くとさすがにゆるやかとはいえ水量が多いから豪快だ。
滝のそばには広い岩場のスペースがあって他の観光客はここで休憩をとっていた。
みんなに混じって休憩しながら作ってきたおにぎりを食べていたら、しばらくしてぞろぞろともと来た道を戻って行くではないか。
時計を見ると11時半だからきっと帰りの観覧船に合わせてのことだろう。
もっとゆっくりできたらいいのに・・・。
休憩を終えてここから先は届け出がいるルートを進む。
とはいうものの道が見つからない。
上流に向かって幅5〜20mほどの岩場が川に沿って広がっているほかは木々に覆われた渓谷という感じだ。
もらってきた地図ではわかりずらいがよーくみるとここからもう少し川に沿って歩くようなルートがとられている。
あちこちに大きな池ができているこの岩場を進んでいくのだろうか。
登山といっても一本道が整備されているところしか歩いたことのない二人にとって道なき道は進むのをためらわせる。
本当にこの先でいいのか?でも他に道が見あたらないし。
迷っているそのとき、遠くの岩場にちいさな木の杭が見えた。
あれはもしかしてトレッキングコースを示しているのか?
とりあえずそこまで行ってみようと歩き始めて数分後、木の杭を間近で見てこのまま川に沿って歩いていけばいいことを確信した。
進んでいくと支流を岩づたいに越えるためにロープがかかっていたり、人が歩いた跡があったりと安心できるものがいくつか見られた。
そしてしばらくしてついに川を離れて山道へと入っていくことになった。
さあ、ここからが本番だ。
ハブにおびえながら歩く
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川が見えれば安心する
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はっきりとわかるくらい道が整備されているわけではない。
なんとなく踏み固められた道ができている程度だ。
イノシシ狩りに来ている地元の人がいくつも分岐を作ってしまうから迷わないように注意するようにエコツーリズム協会では言われた。
けれどもその心配はなさそうだ。
山道に入ったと言っても川沿いを歩いていくことに代わりはない。
川を右手に確認しながら進んでいけば迷うことはなさそうだからだ。
それに時期的にイノシシ狩りに来る人は少ないようだ。
たまに小さな小川を渡りながら、それほど大きなアップダウンもなく、いかにもジャングルといった中を二人の足音だけが響きわたる。
静かというわけではない。
鳥の鳴き声や虫の音、草木のざわめきがあるから静まり返っていることはないけど、人工的な音は全く聞こえない。
がさっ、がさっという足音だけが一定のリズムで聞こえるだけだ。
たまに近くでガサガサッと音がするとびっくりする。
ハブがでたらどうしよう・・・という不安があるからだ。
冬である今の時期はそれほど多く出没することはないというが、それでも出ないとは限らないし警戒はするべきだろう。
もし現れたら?なんてことを考えすぎると足が前に進まなくなるからなるべく考えすぎないようにしよう。
第二山小屋跡
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カンピレーの滝から1時間半ほど歩いたところで第二山小屋跡に着いた。
ちょっとした広場になっていて2,3つくらいならテントは張れそうだ。
まずはここで昼食をとってそれからテントを設営した。
午後からはここを拠点にしてマヤグスクの滝に向かい、またここに戻ってきて宿泊する予定だから荷物を極力減らすためにもテントを張っていった方がいいだろうという考えだ。
ここから先どんな険しい道になるかわからないのに片手に荷物を持っていたのでは不安だからね。
荷物を少なくして出発。
軽い軽いと飛び跳ねながら歩くこと30分、山小屋から500mほどのところにあるであろう滝への分岐点にさしかかった。
このまま進めば横断コース、分岐で滝に向かう道もある。
浦内川に流れ込む支流としてはここまでのルートになかったほどの流れの川に着く。
イタジキ川だ。
コケが生えて滑りやすくなっている岩場を慎重に歩く。
黄色のロープが張ってあって岩場を飛び越えなければならない。
一歩一歩足を出すたびにずるずると滑る。かなり危険。
気をつけよ・・・
オウッ
(ガツッッッ!!)
一瞬何が起きたのかわからなかった。
ここで転倒
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気がつくと目の前に岩があって足の裏は地面についていなかった。
こ、ころんだ。
腕がちょっと痛いけどたいしたことはなさそうだ。
もろに岩にたたきつけたデジタルカメラも壊れてはないようだ。
危ない危ない、もっと気を引き締めねば。
それにしてもここの分岐点、かなりわかりずらい。
この辺に絶対あるはずだとしばらく付近をうろうろ探したらやっとのことで見つけることができた。
見つけたのは木につけてあった赤いテープ。
人が歩いたような跡はほとんどなかったが、行く先々にテープがあるのを見つけて進んでいく。
道なき道をしばらく歩くとやっとのことで踏み固められた道を発見し、ほっと胸をなで下ろした。
ここから先はきつかった。
ぐいぐいと山の斜面を無理矢理登っていくもんだから危険極まりない。
横断ルート以上に通る人が少ないからだろうか、踏み固められ方があまい。
一歩でも踏み外すと二度と登ってこられないような崖を、両手もうまく使いながらゆっくりとそして確実に進んでいく。
テント張って荷物を少なくしてきてよかったと心の底から思った。
気の遠くなるような時間が過ぎて緊張の糸が途切れようかというころ、遠くに滝らしい音が聞こえた。
これがマヤグスクの滝?
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木の隙間から見える。
あ、あれか・・・。
さらに歩いて近くまで来ると滝が見えた。
思ったよりも小さいな・・・。
けどここまでの道のりを思えば滝の大きさなんて気にならない。
写真を撮りまくる。記念撮影だ。
あたりを見回しながらどのアングルが一番いいだろうかと考える。
・・・あれ?道がある。
よくみるとさらに奥へと続く道があるではないか。
もしかしてマヤグスクの滝ってこれじゃないのか??
疑いを晴らすべくさらに奥へと進む。
命がけの険しい登山道をゆっくりと進んでいくと数分後、木々の隙間からまたしても滝が見える。
今度は大きそうだ。
早く早く全容を見たい気持ちを抑えながら、滑り落ちないように慎重に歩いていく。
そして・・・
でた〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
自分の目で見て欲しい
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これか本当のマヤグスクの滝は!
すごい!!
ジャングルの中に突如として現れた古代遺跡のようなその光景にしばらくの間動くことができなかった。
切立った岩盤の割れ目から噴き出した水は扇状の舞台に広がり回廊とも思える複雑な壁を滑り落ちていく。
決して豪快ではない。
だからこそ風景にとけ込んでいるような感覚がある。
滝そのものがというよりもここから見える空間全体が神秘的ですらある。
一気に時間を飛び越えてきたような、そんな感じだ。
いや〜なんかここまでの苦労がすべて報われたような気がする。
来てよかった!!
存分にマヤグスクワールドを堪能していよいよ帰る。
帰り道こそ慎重に、焦らず騒がず急がずマイペースで。
その心構えのおかげで道を間違えることもなく順調に第二山小屋跡まで戻ってきた。
かなり疲れたがそれ以上の充実感がある。
午後4時、これからご飯を炊いて日記を書いたらさっさと寝よう。
明日も歩くんだから。
帰りこそ慎重に
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移動 |
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出発地 |
沖縄県西表島 ほしずな亭キャンプ場 |
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到着地 |
沖縄県西表島 第二山小屋跡 |
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今日の出費 |
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3000円 | | | |
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走行データ |
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走行距離 |
5.3km |
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総走行距離 |
8630.5km |
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走行時間 |
23分 |
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平均速度 |
13.6km/h |
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トレッキングデータ |
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軍艦岩→マリユドゥの滝
マリユドゥの滝→カンピレーの滝
カンピレーの滝→第二山小屋跡
第二山小屋跡→マヤグスクの滝
マヤグスクの滝→第二山小屋跡 |
10:00→10:50 (休憩10分) 11:00→11:10 (休憩30分) 11:40→13:10 (休憩30分) 13:40→14:40 (休憩30分) 15:10→16:00 |
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