148日目
2002年9月14日(日)
【天気】晴れのち曇り
【記録者】とっこり
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「山の中の小さな命」
トドヶ崎は本州最東端である。
岬にそれほどこだわりはなく、日本最北端の宗谷岬と本土最南端の佐多岬に限ってはどうしても行きたいけれど、それ以外の最●端についてはわざわざ行こうとは思わない。
だから今回の日本一周では本土最東端である北海道の納沙布岬には行かなかったのだ。
しかしである、三陸海岸をここまで苦労して走ってきて、ちょっと国道を外れるだけで本州最東端と呼ばれるところにたどり着くのなら寄ってもいいかなと思った。
地図を見ると明らかに国道の方が楽なんだけど、急ぐ旅でもないしちょっと寄り道しようかなと。
その道は厳しかった。
県道に入ってしばらくすると山道になる。
細い道をひたすら、車はほとんど来ないから走りやすいけど、木々がうっそうと茂っていてあまりすがすがしさはない。
標高にして200〜300mくらいで勾配もそれほどきつくはないから楽しい道ではある。
急カーブが連続する山道はなんだか異世界に迷い込んだような気にさせてくれる。
カーブを曲がるたびに下りはまだかと期待していたら、やっと下り坂が現れてくれた。
ここから重茂の集落まではおそらく一気に下りだろう。
カーブがきついのでなるべくスピードを出さないように気をつけて走ることにする。
3つ4つとカーブを過ぎて遠くに次のカーブが見えたとき、道路わきに何か小さな生き物が動いたのが見えて、気になってブレーキをかけた。
ウサギくらいの大きさ。
草むらに隠れたその生き物が何かを確認しようとじーーーっと目をこらす。
子猫だ。
子猫
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全部で5匹
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何かにおびえるようにその子猫は道路のわき、草むらにひそんでいる。
親猫はいないのだろうかとしばらく様子を見ていると、がさがさと近くで音がする。
!!一匹じゃないのか・・・ひーふーみー・・・
全部で5匹。
野良猫特有の汚らしさがなくけっこうきれいなように見える。
どうやら親猫はいないらしい。
子猫たちはその場から動こうとはしない。
我々に対する警戒心があるのだろうか、近づいてもこなければ遠ざかりもしないそんな間合いを常に保っている。
こんな山奥でこんなきれいな子猫が親もいない状態でいるのは状況としては不自然。
だが想像はできる。
車で連れてこられた子猫たちは、ここで捨てられたのではないだろうか。
しかもつい最近。
道路わきで動かないのは動けないだけなのではないか。
どうしたらいいのだろうか。
連れていく?どこに?まさか子猫と一緒に旅をするわけにもいくまい。
以前、日本一周している人が子犬を拾って一緒に旅をするというホームページを見たことがあって、ふとそのことを思い出した。
その子犬は結局、車にはねられてしまった。
多分いまここで子猫を拾って一緒に旅をしたとすると、最初はきっと楽しいだろう。
けれども行動には制約が出てくるし、最終的には車にひかれてしまうかもしれないし面倒を見きれなくて捨ててしまうかもしれない。
そんな無責任なことはできない。
悩んだ。
30分はその場で悩んでいたんじゃないか。
子猫も少しずつ慣れてきて、目の前まで来るようになった。抱きかかえることもできた。
このまま置いていけば、どうなってしまうか。
猫は子供のうちから自分でエサを採ることができるのだろうか。
手本となる親がいない状況で、本能がエサの採り方を教えてくれるのだろうか。
ここで見過ごしていけば死んでしまうかもしれない。
でも連れていっても無責任な行動をとりかねない。
責任をとれない以上、命を預かることはできないと結論を出してこのまま見捨てていくことにした。
かわいそうだがしょうがない。
何かを求めようとする子猫の目を見ているといつまでたっても出発できない。
想いをふりきって、心を鬼にして再び坂道を下るのだった。
トレッキングスタート
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山道を歩く
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その後もアップダウンを繰り返して、本州最東端の入り口である姉吉までやってきた。
ここからは4kmの山道を歩かなければならない。
自転車を置いて、水とタオルなど必要なものだけを持ってトレッキングを開始する。
いきなりぐいぐいと勾配を上げる坂道が続く。
でもきついのは最初だけで、その後はゆるいアップダウンを繰り返して軽快に歩くことができる。
そして歩くこと1時間半、高さ34mの白い灯台が見えた。
到着。
本州最東端
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目の前には海が広がる。
そこからちょっと岩場を歩くと本州最東端の碑があって、ここで記念撮影。
日本一周にとってはたんなる通過点でしかないけど、なんだかうれしい。
波の音、風の音、自然の音しか聞こえない。
じっくりと堪能する。
帰り道も順調。
特にトラブルもなく無事姉吉に戻ってきた。
ゴールしたその場所、トレッキングコースの入り口には一台のチャリと一台のバイクが停まっていた。
どちらも相当な荷物を積んでいていかにも長期旅行者といった感じだ。
姉吉キャンプ場
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もしかしてさっきすれ違った人達がそうなのかと思いながら、だとしたらしばらくは戻ってこないから待ってるのはばかげてるだろうし、縁があれば会うこともあるだろうとすぐそばのキャンプ場へ向かった。
日記を書いて夕食をつくって食べてテントも張り終わったころ、同じキャンプ場の敷地内にはさっき見たバイクと自転車、そしてテントが二つ張られていた。
自転車の彼はやはり長期旅行者だった。
北海道を回ってきて今はスタートして4ヶ月くらいだという。
旅人歴はもっともっと長いらしいから、同じ歳とはいっても旅の先輩にあたる。
バイクの彼女は日本一周中。
我々と同じように会社を辞めて出発している。
後ろに積んだ満載の荷物の一番上に金のシャチホコがあって気になっていたら、なんと愛知県の人だった。
乗り物は違うけど今年の春に愛知県からスタートした日本一周人とあって妙に親近感が沸いた。
北海道を出てから久しく会っていなかった旅人、同じような志を持ってがんばっている人と話すことで元気が沸いてきた。
がんばれ旅人
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