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135日目
2002年9月1日(日)
【天気】曇り
【記録者】とっこり
「人助けと人助けられ」

居心地のよいカニの家をついに出発して、帯広の中心へ向かう。
目的はふたつ、六花亭豚丼である。


六花亭本店

まずは帯広駅の近く、六花亭の本店を探す。
数日前、西三条店に行ってサクサクシューなるものを食べていて、これはその店でしか食べられないシュークリームだったのだが、今回は本店でしか食べられないサクサクパイを頂こうと思っている。
本店はそれほどの大通りにあるわけではなく見つけづらかったけど、しばらく走っているとたどり着いた。
中に入るとけっこうな人の数にびっくり。
西三条店よりも明らかに客数が多い、さすが本店といったところか。
さっそくサクサクパイを買う。
店内にあるテーブルでコーヒーを飲みながらかじる。
!・・・ほほ〜〜これはなかなか。

サクサクパイ

サクサクシューもうまかったがこれもうまい。
ちなみに六花亭は、店内にイスやテーブルを設けてあってタダでコーヒーを飲むことができるため、買った商品をその場で食べることができるのだ。
うれしいサービスだ。

帯広といえば豚丼が有名だ。どの店にしようか迷ったが、特徴ある真っ黒なタレに惹かれて「鶴橋」という店に決めた。

鶴橋

店に到着すると、中から店長さんが声をかけてきて自転車をどこに駐輪したらいいか教えてくれた。
昼食の時間よりも少し早めに来たため店内はまだ混みあっていない。
ゆったりとした空気が流れている。
さっそく注文。
しばらくすると雑誌で見たとおりの真っ黒なタレがかかった、あの豚丼がやってきた。
・・・(ぱくっ)・・・ん?甘い・・・苦い・・・
なんだか不思議な味。
ハマるととことんファンになってしまいそうなそんな味だ。
汁が一緒についてきたのだが、具の豆腐は寄せ豆腐を使っているみたい。珍しいかも。

豚丼・・・黒い!

ここの店長、かなりすばらしい。
お客さんに対する気遣いが最高にいいのだ。
お客さんが笑顔になるツボを知っている、やり手の営業マンって感じ。
いやみっぽい感じは全くない。
会計を済ませて店から出るとき、
「また来てね、待ってるよ。」
と声をかけられてまた来ようと思ったそんな店だ。



豚丼に満足して、新得へ向けて走り始める。
日勝峠は標高1000mあって厳しそうなので今回は逃げの一手で狩勝峠を目指すことにしたのだ。
誰にも文句は言わせない、こっちだって644mもあるんだから。
「鶴橋」を出発してほんの数分後、少し前をふらふらと走っているおばちゃんを発見した。
なんかおかしいと思って近づいてみると、
ゴロゴロ・・・・ぶりぶりりりり・・・・
と変な音がする。
どこかこすれてるのかと思ったがすぐに原因がわかった。
そのおばちゃんはタイヤの空気が抜けた状態で走っていたのだ。
多分パンクだろう。
声をかけておばちゃんを止め、パンクしているみたいだから直しましょうかともちかけた。
なぜだろう。
このときは無性に声をかけたかった。
おばちゃんがきれいな人だったとかそんな不純な動機ではない。
いつもいろんな人にお世話になってきて恩返しすらできない自分のふがいなさに情けなさを感じていたのが、ここにきて自分のできる世の中への恩返しが目の前に現れたような気がしたのかもしれない。
とにかく声をかけた。
自分にとっての第一歩だった。

声をかけたまではよかった。
ところがこのおばちゃん、耳が聞こえないようなのだ。
しきりに手話で話しかけようとしている。
こちらはその手話が全然分からない。
分からないけど今やるべきことは目の前にあるパンクを直すことだ。
手話で何を言っているかわからないけど、よけいなお世話といわれようがパンクを直さずにいられない。

成り立たない会話もそこそこにして修理に取りかかる。
嫌な予感はしていたがバルブは英式
おおざっぱに言うとママチャリなどの普通自転車は英式、ロードレーサーは仏式、マウンテンバイクは米式や仏式とバルブの型には3種類あるのだ。
自分のマウンテンバイクは米式で持っている空気入れは米式・仏式にしか対応していない。
これは困った。
困ったが迷っている暇はない、パンクは直さなければならないのだ。
・・・たこべーに頼んだ。
近くで空気入れを借りてきてくれと。
幸いにも今日は日曜日とあって駐車場で車の手入れをしている人がいたので借り手はすぐに見つかった。
たこべーは事情を話してすぐに空気入れを借りて戻ってきた。
その間、パンク修理を進めた。
おばちゃんとは音声による会話ができずにいたが、とまどった様子もなくじっと待っていてくれた。
パッチを貼って最後に空気を入れておしまい。
あまり自信はないがどうやら直ったっぽい。

修理が終わったことを手振りで伝えると何度も何度も礼をしてくれた。
お礼をしたいのはこっちの方だ。
お世話になりっぱなしの今回の旅からすこしだけ成長できたのだから。
別れ際、おばちゃんは1000円を手渡してきた。
それだけはかんべんしてほしいと、そんなものが欲しくてパンク修理したのではないと主張したが聞き入れてもらえず、手にお札をねじこんでおばちゃんは走り去っていってしまった。
手には千円札が一枚、仕事に対する報酬だとわりきって頂くことにしよう。


新得までの道のり、まっすぐに向かっても何も見るところがなくてつまらなそうだったので考えた。
さきほど「鶴橋」の店内にあった周辺の観光マップの中に、「畑の中の美術館」というのがあった。
特別美術の分野に興味があるわけではないが、なんだかおもしろうそうだから行ってみよう。
地図に従って国道を外れ、県道に入る。
アップダウンがものすごい。
距離にして約10km、夕方になりそろそろ宿を探さねばならない時間にもかかわらずひたすら走る。
なんにもない道。ただひたすらアップダウン。
北海道はまっすぐな道がずーーーっと延びているイメージがあるけど、実際ここまで走ってきてみて確かにそういった道もたくさんあったけど、やはり県道は甘くない。
自転車には厳しい道だ。

なかなか目的の美術館が見つからず、道を間違え電話で道を確認したりしながら時間が流れる。
やっとこさ到着したときには疲れ切っていた。
大丈夫なのか?まだ宿探しで走らないといけないのに。


畑の中の美術館

確かに周りは一面に畑が広がっていた。
建物の外観は牛舎って感じ・・・。
中に入ると館長さんが一人。
美術館とは言いつつもその人のアトリエらしい。
ここに来るのは知り合いくらいだといって珍客を歓迎してくれた。
めっちゃ疲れ切った顔をしていたので、気の毒に思ったのかカップラーメンをごちそうしてくれた。
うれしい、二人してがっついてしまった。
そうとう腹が減っていたらしい。
しばらく話をして、この建物は以前牛舎だったのを改造したものらしいこと、画風は神田日勝という画家の影響を受けているということ、この周辺でキャンプできそうなところはもう10kmくらい先の鹿追町の中心しかないことなどを教えてもらった。
あと10km・・・つらい。
そんな気持ちを察してか、館長さんは自分の車の中(けっこう大きい)だったら泊めてあげると言ってくれた。
そのありがたい一言に迷うことなく飛びついた。
遠慮しては損だ。

昼間、人助けとしてパンク修理をした。
そして今、自分たちが助けられようとしている。
この二つの出来事、無関係のように思えるがじつはそうじゃない、きっと誰かが見ていて手をさしのべてくれたんだとそんな風に思えてならない。




移動
出発地 北海道帯広市 大正カニの家
到着地 北海道帯広市 絵描きさんの車の中

今日の出費
2708円

走行データ
走行距離 52.6km
総走行距離 5096.0km
走行時間 3時間42分
平均速度 14.2km/h




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