94日目
2002年7月22日(月)
【天気】曇りのち雨
【記録者】とっこり
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「移動型ホームレスと定住型ホームレス」
美瑛
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美瑛はやっぱりすばらしかった。
午前中は美瑛町をふらふらと、見事なパッチワークを存分に楽しむことができた。
写真で見るよりもやっぱり実際にこの目で見る方がイイ。
観光を目的として作ってある景色ではないはずなのにこれだけのものが提供できるなんて、さすが北海道といったところか。
あいにく天気の方はくもりがちであっぱれとはいかなかったが、それでも美瑛の良さが少し理解できたような気がする。
美瑛から旭川市へ向かう。
途中から雨に降られてしまい、宿泊を予定していたキャンプ場はきっと地面がびしょびしょだろう。
こんな日に旅人を雨から救ってくれるところといえば、橋の下である。
何度かお世話になった橋の下。
地図を見てめぼしい橋をチェックしてから現地へ行ってみた。
橋の上からのぞき込んでみる。
けっこう幅の広い橋で、橋の下はコンクリートになっている。
これなら大丈夫、雨はバッチリ防げるだろう。
よく見ると橋の下には車が一台停まっていて、二人のおじさんが話をしているようでなんだか行きづらい。
けどこのまま雨に濡れているわけにもいかず、ほかにいいところが見つかる気がしなかったから意を決して橋の下へ降りていった。
珍しい二人組がやってきたのだから当然おじさんたちは声をかけてくる。
いつものように日本一周の説明をすると、興味を持って聞いてくれる。
旭川のとある橋
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そしてやたらと親切にしてくれる。
「テントを張るのならここがいい、よっぽどの大雨でなければ川の水はここまで来ない。」
「風が強いから」といって車を横付けして風を防いでくれる。
夕食の時にはガスコンロを貸してくれる。
車に積んであったテーブルとイスを貸してくれる。
すごくいい人達だ。
ところが、話を聞いているとどうもここに長く住んでいるような発言が多いのだ。
ホ、ホームレス!?
そうなのだ。
うすうすは気づいていた。
でもこのおじさんたちはきっと地元の人なんだと自分に言い聞かせていた、そう思いたかった。
気になることは解決しなければ!
「あのーここに住んでもう長いんですか?」
返ってきた答え、長い人で4年だという。
橋げたの裏には住居があって、今は6人が住んでいるという。
別にホームレスに対して偏見があるわけではない。
言ってみれば我々もホームレスなのだ。
仲間意識こそないけどそうそう嫌な存在でもない。
ただ、あんまり長々と話はしたくない。
暗くなる前に夕食と日記だけは終えておきたいからだ。
その願いもむなしくホームレスのおじさん達はイイ話し相手が現れたのを機に、エンドレスに話し続けた。
その話の内容を少しだけ紹介しよう。
よくしゃべるそのおじさんはSさん。建設会社で定年まで働き、奥さんもいれば子供もいるらしい。退職金のうち1千万円だけもって自ら望んで橋の下の生活をスタートさせたらしい。食べ物には不自由していなくて、いろんな人からお礼やらでいろんな物が贈られてくるそうだ。この橋の下に。住所はちゃんとあって橋の下まで郵便物は届くらしい。
米、干物、野菜、カニ、関アジ、すじこ、いくら、たらこ、やきとり、パン等々とにかくいろんなものが届くんだと自慢げ。
なんと市から橋の下に住むことに対する許可状が出ているという。
顔が広いんだと、旭川のホテルや層雲峡のホテルのほとんどは顔パスでタダで泊まれると言っていた。
ここまでくると怪しい。
果たしてどこまでが本当だろうか。
自分のことをやたらと自慢したがり、旭川でオレの右に出るやつはおらん!と言っていたが、なんか情けない。
人の評価というのは他人によって判断されるものであって、自分で自分のことをとやかく言うべきではない。
思ってもいいが表に出すべきではない。
本当に自分に自信のある人間は、自分を大きく見せようとはしないものだと思う。
ホームレスはやはりホームレスでしかないのだろうか。
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