「最高!最低!広河原の湯」
今日はこの旅初の冒険となる。
事前情報として調べてあった「広河原の湯」に行きたくてたこべーに申告したものの、実はここダートを走らないと行けないところなのだ。
MTBだからそんなの関係ないじゃんて思うかもしれないけど、ツーリング車はそんな単純ではない。
重い荷物のせいで舗装路でもちんたらしか走れないのにダートになったら一体どーなってしまうのか!
不安はあったが、たこべーのことを考えるとあからさまに顔には出せない、出せばきっと嫌がって行こうとしないから。
米沢から白川の集落までは比較的ゆるい道をひたすら走っていたら着くことができた。
とはいえ、ほとんど車の通らないような山道で、細いところは車一台しか通れないようなところだ。
ここで問題発生。
白川の集落に着いたまではよかったのだが、実は「広河原の湯」の場所を知らないのだ。
ツーリングマップルにはかろうじて記載されているものの、道は途中までしか書かれていないので道順まではわからない。
看板が出ているもんだと思って余裕かましていたのだがそれもない。
やばいやばいと思って集落を走りながら温泉宿で聞き込みするとやっとわかった。
広河原温泉への入り口から10kmほどはアップダウンはあるものの車が少なくて走りやすい。
すんごいのどかな所で、DASH村だと言っても笑われないほどだ。
ダートを走る
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そんなところをしばらく走っていくとついにダートが現れた。
さあここからが本番だ!気合いを入れて走り出した。
最初はじゃり道といってもたいしたことなくてほぼ平坦な道だ。
進んでいくにしたがって水溜りが増え出して走りにくいと思っていたら、ついに道を横断している川(!)に遭遇してしまった。
川が道を遮る
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結構深い・・・いや浅いか。
川底は大きい石がごろごろしている。
降りて押していくなら靴を脱がないと濡れてしまう。
乗って強引に突破するにはちとテクニックが必要だ。
・・・考えた末、乗っていくことにした。
まずはオレから。勢いをつけて入水した。
うぉっ!バランスが・・・ふん!やあっとおっ!!
なんとか成功。次はたこべーの番だ。
自分がやってみてけっこう際どかったからもしかしたらやばいかな〜なんて思って見ていると、
お、おぅぇ・・あぅっっぎえっ!!!
バシャッ!
やってしまった・・・。
靴はびしょびしょだ。
帰りもココを通らないといけないかと思うと気が重い。
この先も水溜りこそあったものの、道全体をふさいでいるのはなく無事に進んだ。
映画撮影中の看板
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そして残り4.7kmという看板が出たところで10台ほどの車が止まっているのが見えた。
「ああ、これか・・・」
実はここに来る途中、
「間欠泉方面は映画のロケのため通行止め」
という立て札を何度か見ていたのだが、そんなことで米沢からはるばる来た苦労を無駄にしたくなかった。
だからここまで立て札を無視してきたのだが、ついにそのロケ現場に出くわしてしまったというわけだ。
まもなく一人の男が近づいてきて話を始めた。
この人、対応が親切でこちらの事情をちゃんと聞いてくれて、あと一時間ほどでロケが終了することを教えてくれた。
結局待つことにしたのだが、引き返せといわれてもきっと反発していただろう。
ロケ地を通過した後は上りが始まった。
きっと車やバイクや空荷のMTBだったらなんでもない道なんだろう。
けれども今は荷物満載のツーリング仕様だ。
じゃりが大きくなり勾配がきつくなってくるととたんに乗ってられなくなり、ひたすら押しの一手となってしまった。
途中、「荒天時には通行止」という看板を見かけたがそれも納得のひどい道である。
一時間は経っただろうか。
腕がパンパンになりもうそろそろ限界が近づいてきそうな気配が漂ってきていた。
残り250m
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これ以上続くのなら断念して引き返さねばなるまい、そう思い始めた頃ついに温泉の看板が見えてきた。
「秘境の湯」と書いてあったが正に納得。
車やバイクの人には秘境でなくとも我々には十分過ぎる秘湯だ。
看板にはあと250m先だと書いてあるので押して進むと最後の難関が待っていた。
雪がたんまりと道をふさいでいるではないか。
道の脇を無理やり人が通った跡があるだけで他に進む道はない。
一台の自転車を二人がかりで持ち上げて2往復、ついに温泉にたどり着いた。
ふぅ、温泉にたどり着くのにここまで苦労したのは初めてだ。
温泉に入る前に食事の準備を始めた。
まずはすっかり飲み干したお茶を改めて沸かし、続いてパスタをゆでた。
相当腹が減っていたらしくあっという間になくなってしまったが、そんなに食料を持ってきていなかったから空腹を満たせずに食事は終了。
他のお客さんがいなくなるまで二階の休憩室で日記を書いて待つことにした。
しばらくするとだれもいなくなったようなので急いで更衣室に行き、すっぽんぽんになって露天風呂に向かった。
あれ?吹きあがってない・・・
間欠泉は一定間隔で吹きあがるらしく、そのときはちょうど止まっているときだった。
まあそのうち出てくるだろうと思い、気にせずに湯船に飛び込む。
広河原の湯
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休憩室
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!!!ぬるいっ!
とてもじゃないが長くは入っていられない。
6月とはいえ標高が高いから気温が低く、そのぬるい湯につかっていると風邪を引いてしまいそうだ。
あとで調べて分かったのだが、ここの源泉は35.1℃しかないらしい。
どーりでぬるいわけだ。
しばらく入浴していたのだがいつまでたっても間欠泉は吹きあがってこない。
寒くなってきたから吹き上げをあきらめてとりあえず中に入ることにした。
服を着て二階に上がって日記の続きを書こうとしたそのとき、
ばしゃ・・・ばしゃ・・・ばしゃばしゃしゃしゃーーーー!!
や、やられた。
二人とも急いで更衣室に戻って服を脱ぎ、露天風呂に飛び込む。
間欠泉は2m以上はあるだろうか、勢いよく吹きあがっている。
ああ、これだよこれ、このために汗水たらして頑張ってきたんだ。
ここまでのつらい道のりがすーっっと消えていく様だった。
そのあと満足するまで入っていたが、他の人が来ることはなく存分に楽しむことができた。
夕方になり、今日はもう帰る気力がないからここに泊まらせてもらうことにする。
寝袋で寝ているとバシャバシャと間欠泉の水音が聞こえてくる。
周りには道路も民家もなくホントの山の中、水音だけが響き渡っていた。
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